2026年8月31日、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、2027年度から開始予定の新試験制度である高度情報技術試験について、科目Bのサンプル問題を公式サイトで公開しました。
※本試験は当初「プロフェッショナルデジタルスキル試験」という仮称で呼ばれていましたが、2026年10月16日に正式名称が高度情報技術試験に決定しました。
この記事では、公開された高度情報技術マネジメント試験・高度情報技術システム試験の科目Bサンプル問題について、各問の内容、正解、出題の狙いを順に整理します。
出典:IPA「新試験制度のサンプル問題について」(https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2026/20260622.html)
著作権はIPAに帰属します。教育目的での引用のため使用許諾不要(IPA規定に基づく)。
公開済みサンプル問題の全体像
現時点で公開されているサンプル問題は次のとおりです。
| 試験区分 | 科目 | 問題数 | 公開日 |
|---|---|---|---|
| 高度情報技術マネジメント試験 | 科目B | 4問 | 2026年8月31日 |
| 高度情報技術システム試験 | 科目B | 6問 | 2026年8月31日 |
| データマネジメント試験 | 科目A・B | 各種 | 2026年6月22日 |
| 高度情報技術データ・AI試験 | – | 準備中 | – |
IPAの公式PDFは以下から入手できます。
高度情報技術マネジメント試験 科目Bのサンプル問題(全4問)
マネジメント区分の科目Bは4問構成で、DX推進、サービスマネジメント、プロジェクトマネジメント、システム監査が題材になっています。
問1:地域MaaSを推進するデジタル戦略(正解:エ)
問題のあらまし
Z県が交通事業者・観光事業者と連携して一般社団法人Yを設立し、地域MaaS(Mobility as a Service)を進めるという設定です。鉄道・バス・観光施設の検索、予約、決済をスマートフォンアプリでまとめて提供し、デジタルフリーパスやオンデマンド交通も組み合わせて顧客体験価値を生み出します。この取組みでY法人が実現しようとしている内容を、正しく組み合わせて選びます。
押さえたい着眼点
- 各事業者を「垂直統合」するのではなく、独立性を保ったまま相互連携(共通API)でワンストップ提供している
- 目指すものは業務改革の最適化ではなく、顧客体験価値の創出である
- 各事業者の業務効率化が目的ではなく、地域経済の持続可能な成長モデルの実現が狙いである
正解:エ (一),(四),(六)
- (一) 各事業者のサービスとの相互連携によってワンストップでサービス提供する
- (四) 予約・移動・観光体験・決済といった一連の顧客接点をデジタル技術でつなぐ
- (六) 地域MaaSによって,顧客体験価値を創出し,地域経済の持続可能な成長モデルを実現する
問2:インシデント管理と問題管理のプロセス(正解:エ)
問題のあらまし
K社の情報システム部が販売サービスを提供しており、そのインシデント管理プロセスが題材です。SDは100件のインシデントを受け付け、そのうち30件をエスカレーションし、さらにその中の15件で開発課が回避策を見つけました。この状況から、インシデント終了時の連絡先(_a_)と、改善の要否を調べるべきプロセス(_b_)を選びます。
正解:エ a=(二)利用者、b=(四)表1の手順”既知の誤りの調査”
解説
- インシデントを終了する際は、利用者へ連絡して動作を確認してもらう(ITILの考え方に沿った対応)
- 開発課はエスカレーション後に15件の回避策を見つけたが、SDの「既知の誤りの調査」ではそれを見つけられなかった。したがって、SDにおける既知の誤りの調査に改善課題がないかを調べるべきである
問3:SaaS機能追加プロジェクトのスコープ管理(正解:カ)
問題のあらまし
A社がSaaSに機能を追加するプロジェクトで、予算超過が問題になっています。「予算内で確実にリリースする」と「短期的な資金繰りを改善する」という二つの条件を両方満たす進め方を選ぶ問題です。
正解:カ (四),(五)
- (四) 要望3(大口顧客固有の要望)のうち、費用負担で合意済みのものを優先して実現する。これにより資金繰りが改善する
- (五) 顧客に要件定義へ参加してもらい、要件が要望に適合していることを確認する。これにより確実なリリースにつながる
問4:AIチャットボット導入のシステム監査(正解:ウ)
問題のあらまし
B社がコールセンターにAIチャットボットを導入する計画で、PoC、要件定義、テスト、本番移行の各工程における監査要点が整理されています。監査部長が「不十分な監査要点がある」と指摘した項番を特定します。
正解:ウ 項番(3)
解説
項番(3)「設計・実装・テスト工程」の監査要点は「要求品質を満たすための学習データと教師データを準備する計画となっているか」です。ところが、これに対応するリスクは「学習させ、結果を評価しないことによって不適切な回答を生成する」ことでした。つまり、監査要点に「評価する計画となっているか」という観点が欠けています。
高度情報技術システム試験 科目Bのサンプル問題(全6問)
システム区分の科目Bは6問構成です。マネジメント区分よりも技術寄り、実装寄りの内容で、IoT、クラウド、WebSocket、アジャイル開発といった新しめの技術が幅広く扱われています。
問1:不動産売買仲介システムのダッシュボード要件(正解:エ)
問題のあらまし
A社が不動産売買仲介システムを刷新し、新システムにダッシュボード機能を加える場面です。「マネージャが現在の業務で確認している、営業担当者ごとの情報」を正しく特定します。
正解:エ (一)媒介契約数,(四)各物件の物件ステータスの値の推移
解説
- マネージャが営業担当者ごとに確認しているのは「媒介契約数の推移」と「各物件の物件ステータスの値の推移」
- 「自部門全体の媒介契約数」は部門単位の数字であり、営業担当者ごとの情報ではない
- 「成約率」は営業担当者自身が確認する項目で、マネージャのダッシュボード対象ではない
問2:クラウド上のECサイトでのアプリ無停止切換(正解:イ)
問題のあらまし
パブリッククラウド上のECサイトで、ロードバランサーのグループ切換機能を使ってアプリを無停止で新バージョンに切り換える手順を検証します。確認すべき条件(_a_)と、切戻しを加える際に削除すべき手順(_b_)を選びます。
正解:イ a=(一)、b=(五)
- a:アプリxが最後にリクエストを受けた時刻が、アプリyが最初にリクエストを受けた時刻より早いこと(両方が同時にリクエストを受けていないことの確認)
- b:手順(13)のグループ1の仮想マシン停止を削除する(切戻しのためにグループ1を残しておく必要があるため)
問3:橋梁点検IoTシステムのアーキテクチャ設計(正解:キ)
問題のあらまし
F社がセンサーノードとカメラロボット(ドローン)を使った橋梁点検システムを設計します。風向・風力のデータをリアルタイムで取得するためのアーキテクチャを考え、空欄a〜fを埋めます。
正解:キ a=(十)即時性、b=(四)診断サーバ、c=(三)点検制御装置、d=(一)センサーノード、e=(五)橋梁情報、f=(九)省電力性
解説
定期送信される橋梁情報には即時性がありません。そこでセンサーノードにリアルタイムの計測・送信機能を加えます。診断サーバが点検制御装置からの要求を中継し、センサーノードに即時計測させることで、橋梁情報の即時性とセンサーノードの省電力性を両立できます。
問4:WebSocket通信のハンドシェイク(正解:ア)
問題のあらまし
マイクロサービスとコンテナで構成されたWebシステムが、取引先システムとWebSocketで接続するときのハンドシェイク処理を理解しているかを問います。
正解:ア a=(一)、b=(三)101、c=(五)SHA-1、d=(七)WebSocketを利用可能である
解説
- WebSocketへのアップグレード応答ヘッダは「Upgrade: websocket / Connection: Upgrade」
- ステータスコードは101 Switching Protocols
- Sec-WebSocket-AcceptはSHA-1によるハッシュ値(RFC 6455準拠)
- この検証で確認できるのは、相手がWebSocketを利用可能であること。なりすましの防止まではできない
問5:自動収穫ロボットの状態遷移設計(正解:ア)
問題のあらまし
温室でトマトを自動収穫するロボットの状態遷移図を完成させる問題です。動作の概要から、待機、開始/終了、検出中、収穫中、積載中、異常の各状態の遷移を読み取ります。
正解:ア a=異常、b=検出中、c=収穫中、d=積載中
問6:スクラム開発チームの協働設計(正解:オ)
問題のあらまし
A社がWebサービスの開発にアジャイル(スクラム)を適用する場面です。スクラムマスターの役割(_a_)と、ペアプログラミングの担当の組合せ(_b_)を選びます。
正解:オ a=(一)自律的、b=(七)M4とM6がドライバーとナビゲーターを交代で
解説
- スクラムマスターは、チームが自律的に協働できるよう支援する役割
- ペアプログラミングでは「アジャイル経験なし」と「経験あり」の組合せ(M4とM6)が交代で担当すると、知識の移転が最大になる
サンプル問題から読み取る出題傾向と学習のコツ
高度情報技術マネジメント試験の傾向
- DX・デジタル戦略(MaaS、顧客体験価値、共通API)
- ITサービスマネジメント(ITIL準拠のインシデント管理・問題管理)
- プロジェクトマネジメント(スコープ管理、ステークホルダー管理)
- システム監査(AI導入プロジェクトのリスクと監査要点)
高度情報技術システム試験の傾向
- クラウドアーキテクチャ(ロードバランサー、無停止デプロイ)
- IoT・組込みシステム(センサー、ドローン、状態遷移)
- ネットワーク・プロトコル(WebSocket、TLS、ハンドシェイク)
- アジャイル開発(スクラム、ペアプログラミング)
- AI応用(学習データ、推論システムの設計)
現行試験と高度情報技術試験の違い
| 観点 | 現行(応用情報等) | 高度情報技術試験 |
|---|---|---|
| 出題形式 | 選択式+記述式 | 選択式のみ(科目B) |
| トピック | IT全般 | DX・AI・クラウド・アジャイルを重点化 |
| 文章量 | 比較的短め | 長文ケーススタディ形式 |
| 受験方式 | 年2回の一斉試験 | CBT(随時受験予定) |
現行試験との違いをさらに詳しく知りたい方は、応用情報と高度情報技術試験の比較記事もあわせてご覧ください。
まとめ
今回のサンプル問題を見ると、高度情報技術試験は現行試験に比べて、実務や現場に近い長文の事例問題が中心になると分かります。知識を覚えているだけでは足りず、複数の情報を組み合わせて状況を判断する力が試されます。
サンプル問題の全10問は、IPA公式サンプル問題の全問解説記事で選択肢つきで確認できます。実際に解いて確認したい方は、高度情報技術試験 問題演習道場をご利用ください。
高度情報技術試験の最新情報は、今後も当サイトで発信していきます。
- 公式情報ページ:IPA「新試験制度のサンプル問題について」