高度情報技術試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2027年度から実施する新しいIT国家資格です。応用情報技術者試験を含む現行の情報処理技術者試験は2026年度で終了し、高度情報技術マネジメント試験・高度情報技術システム試験・高度情報技術データ・AI試験の3区分に再編されます。2026年7月にはシラバスVer.0.2が公開され、出題範囲の全体像が見えてきました。この記事では、試験の区分・形式・スケジュール・応用情報技術者試験との違いを整理します。
※本試験は当初「プロフェッショナルデジタルスキル試験」という仮称で呼ばれていましたが、2026年10月16日に正式名称が高度情報技術試験に決定しました。
高度情報技術試験の概要
高度情報技術試験は、IPAが進めるIT国家資格の大規模な見直しの中心に位置づけられる新試験です。2025年5月に公表された「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書」が政策上の根拠となり、従来の試験体系が根本から再設計されました。
高度情報技術試験は、次の3つの区分に分かれています。
- 高度情報技術マネジメント試験:データやデジタル技術を活用するプロセスのマネジメントを問う専門試験。従来のITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、応用情報に相当します。
- 高度情報技術システム試験:システムの要件定義、アーキテクチャ設計、開発、運用をリードする力を問う専門試験。従来のシステムアーキテクト、ネットワークスペシャリスト、応用情報に相当します。
- 高度情報技術データ・AI試験:データドリブンな取り組みを支える基盤づくりの専門試験。従来のデータベーススペシャリストに相当します(シラバスは準備中)。
創設の背景:なぜ試験体系が変わるのか
デジタル化の加速とスキルのミスマッチ
AI、クラウド、データサイエンス、サイバーセキュリティなどの分野が急速に進歩し、企業のDX推進も加速しています。その結果、ITエンジニアに必要とされるスキルは以前から大きく変わりました。ところが現行の情報処理技術者試験は1990〜2000年代に作られた体系が土台になっており、現代のデジタル社会で求められるスキルと試験内容との間にずれが生じていました。
制度改革の主なポイント
- 現行の応用情報試験と高度試験(8区分)を、高度情報技術試験の3区分へ集約
- 年2回の一斉実施から、CBT(随時受験)方式へ全面的に移行
- AIコーディング支援、生成AIの活用、ゼロトラストなどの最新技術を出題範囲に明記
- 対象をエンジニアだけでなく、DX推進担当者やビジネス人材にも拡大
2027年度からの試験体系を一覧で確認
2027年度に始まる新しい試験体系は、次の表のとおり8つの区分で構成されます。
| レベル | 試験区分 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 基礎 | ITパスポート試験(内容変更) | ビジネスパーソンに求められるデジタルリテラシーの基礎評価 |
| 基礎 | データマネジメント試験(新設) | データ・AIを効果的に利活用するデータマネジメントの基本評価 |
| 基礎 | 情報セキュリティマネジメント試験(継続) | 組織の情報セキュリティ活動の基本評価 |
| 基礎 | 基本情報技術者試験(継続) | ITエンジニアとしての基本知識評価 |
| プロフェッショナル | 高度情報技術マネジメント試験(新設) | デジタル戦略・DX推進・プロジェクト管理の専門知識 |
| プロフェッショナル | 高度情報技術データ・AI試験(新設) | データドリブン活動を支える基盤構築の専門知識 |
| プロフェッショナル | 高度情報技術システム試験(新設) | システム設計・開発・運用を主導する専門能力 |
| プロフェッショナル | 情報処理安全確保支援士試験(一部変更) | サイバーセキュリティ対策の専門人材認定 |
高度情報技術試験の形式と科目構成
高度情報技術試験は3区分すべてがCBT(Computer Based Testing)方式で行われ、科目構成は次のとおりです。
| 科目 | 内容 | 試験時間 | 問題数 | 形式 |
|---|---|---|---|---|
| 科目A-1 | 共通知識(3区分共通) | 90分 | 60問 | 四肢択一(CBT) |
| 科目A-2 | 専門知識(領域別) | 120分(合算) | 23問 | 四肢択一(CBT) |
| 科目B | 技能・実務応用(領域別) | 12問 | 記述・選択混在 |
科目A-1は3区分に共通する基礎知識を問う科目で、ITパスポートや基本情報技術者試験の延長にあたる内容です。シラバスは現在準備中です。科目A-2と科目Bでは各領域に固有の知識と実務スキルを問われ、120分・合計35問で評価されます。
応用情報技術者試験との違い
現行試験はいつ終わるのか
応用情報技術者試験は、2026年度(2027年春試験)をもって終了する予定です。2026年6月にIPAが公開したシラバス(案)で、現行試験の廃止と新試験への移行方針が示されました。2026年度中に現行試験を受けようと考えている方は、早めに計画を立てる必要があります。
| 比較項目 | 応用情報技術者試験(現行) | 高度情報技術試験(2027年度〜) |
|---|---|---|
| 開始・終了 | 〜2026年度末で終了予定 | 2027年度夏〜秋より開始予定 |
| 試験方式 | 年2回・一斉ペーパー試験 | CBT(随時受験) |
| 区分数 | 1区分(AP) | 3区分に分化(M・S・D) |
| 対象者 | ITエンジニア中心 | エンジニア+ビジネス・DX人材 |
| 新技術対応 | 限定的 | 生成AI・ゼロトラスト・DevOps等を明示 |
| 問題形式 | 午前(四肢択一)+午後(記述) | 科目A-1(60問)+科目A-2+B(35問) |
両試験の詳しい比較は、応用情報と高度情報技術試験の比較記事でも解説しています。
今後のスケジュール
- 2026年6月30日:マネジメント区分・システム区分のシラバス Ver.0.1を公開
- 2026年7月31日:シラバスをVer.0.2に更新(科目A-2の出題範囲細目を追加)
- 2026年夏を目標:科目A-1(共通)とデータ・AI区分のシラバスを公開予定
- 2026年度末まで:現行の応用情報技術者試験・高度試験が引き続き実施
- 2027年度春頃:ITパスポート・情報セキュリティマネジメント・基本情報が新制度で開始
- 2027年度夏〜秋頃:高度情報技術試験の3区分と情報処理安全確保支援士試験が開始予定
合格に向けて今から始める準備
まず受験する区分を決める
高度情報技術試験は3区分に分かれ、それぞれ専門とする領域が違います。自分のキャリアや担当業務に照らして、どの区分を目指すのかを早めに決めておくと学習計画が立てやすくなります。
- 高度情報技術マネジメント試験:DX推進、プロジェクト管理、IT戦略に携わる方向け
- 高度情報技術システム試験:システム設計、アーキテクチャ、クラウド、ネットワークを扱う技術者向け
- 高度情報技術データ・AI試験:データエンジニアリング、機械学習、AIシステムの構築に関わる方向け
現行試験の学習を無駄にしない
応用情報技術者試験の勉強で身につけた基礎的なIT知識は、高度情報技術試験でも役立ちます。特に科目A-1(共通知識)は、現行の応用情報の午前問題と出題範囲が重なると考えられます。2026年度中は現行試験に挑戦しつつ、高度情報技術試験への移行準備も並行して進めるのが効率的です。
新しい技術分野を先取りする
高度情報技術試験のシラバスには、現行試験にはなかった最新技術が数多く盛り込まれています。次の分野を重点的に押さえておくと有利です。
- 生成AI・LLM・プロンプトエンジニアリング・AI駆動開発
- クラウドアーキテクチャ(マルチクラウド・コンテナ・Kubernetes・FinOps)
- DevOps・CI/CDパイプライン・SRE(サイト信頼性エンジニアリング)
- ゼロトラストネットワーク・AIセキュリティ・OWASP Top 10
- DX戦略・OKR・アジャイル・スクラム
知識の定着には問題演習が欠かせません。高度情報技術試験 問題演習道場で、科目A-1を中心に練習問題へ取り組んでみてください。
この記事のまとめ
- 高度情報技術試験は、2027年度夏〜秋に開始予定のIT新国家資格(CBT方式)
- 応用情報・高度試験は2026年度末で終了し、高度情報技術試験の3区分に再編される
- 3区分は、高度情報技術マネジメント試験・高度情報技術システム試験・高度情報技術データ・AI試験
- 試験構成は、科目A-1(90分・60問)+科目A-2+B(120分・35問)
- マネジメント区分とシステム区分のシラバスVer.0.2は2026年7月に公開済み
- 現行試験の学習を続けながら最新技術を押さえるのが、効率のよい準備法
シラバスの詳細(出題範囲・技能ターゲット)は、本サイトの高度情報技術試験シラバス完全解説記事をご覧ください。公式情報はIPA公式ページでも随時確認できます。