IPAの試験制度の再編により、応用情報技術者試験と旧高度試験8区分は、新しい高度情報技術試験にまとめられます。では、この再編によって何が引き継がれ、何が変わったのでしょうか。
この記事では、経済産業省の省令案とIPAが公開したシラバス案・サンプル問題をもとに、再編前後の試験を比較します。どの試験がなくなり、どの試験が新設されるのかという全体の一覧は「IPA試験の再編|新旧の試験区分対応表」にまとめていますので、あわせてご覧ください。
※本試験は当初「プロフェッショナルデジタルスキル試験」という仮称で呼ばれていましたが、2026年10月16日に正式名称が高度情報技術試験に決定しました。比較の内容は公開済みの資料をもとにした当サイトの整理です。最終的な情報は必ずIPA公式サイト(IPA 試験制度の見直しについて)でご確認ください。
再編の全体像:9つの試験が3区分の1つの試験に
応用情報技術者試験と旧高度試験8区分(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャ、システム監査技術者)の9試験が、次の3区分からなる高度情報技術試験に再編されます。
| 新区分 | 試験の対象(省令案より要約) |
|---|---|
| 高度情報技術マネジメント試験 | 業務の一体的な企画、システムの開発・提供に係る業務のプロセス管理 |
| 高度情報技術データ・AI試験 | データの管理・設計・分析と、それを活用するシステムの設計・活用 |
| 高度情報技術システム試験 | 情報処理システムの設計・開発・管理 |
改正後の規則の施行は2027年4月1日、試験開始は2027年夏〜秋ごろの予定です。
再編で「引き継がれたもの」
国家試験としての位置づけ
高度情報技術試験も、従来と同じく「情報処理の促進に関する法律」にもとづく情報処理技術者試験のひとつです。IPAが実施する国家試験である点は変わりません。
「共通の土台+専門」という考え方
旧高度試験には全区分共通の午前Iがありました。高度情報技術試験でも、全区分に共通の「共通的知識」(科目A-1)が設けられています。
旧区分の専門領域
プロジェクトマネジメント、ITサービスマネジメント、システム監査、システム設計、ネットワーク、データベースといった専門領域は、新しい3区分の中に引き継がれています。
| 旧区分の領域 | 近い新区分 |
|---|---|
| 企画・プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・監査 | マネジメント試験 |
| システム設計・ネットワーク・組込み | システム試験 |
| データの管理・設計・分析 | データ・AI試験 |
区分ごとの詳しい対応は「IPA高度試験の再編|旧8区分の移行先」で解説しています。
情報処理安全確保支援士との連携
旧制度でも、支援士試験と高度試験の間には午前Iの免除がありました。新制度でも、支援士試験と高度情報技術試験の間で、合格や基準点到達から2年以内であれば共通的知識が相互に免除される仕組みが続きます。
再編で「変わったもの」
区分が9つから3つに
細かく分かれていた区分が、役割ベースの3区分に整理されました。自分の仕事に合わせて選びやすくなった一方で、1区分あたりの守備範囲は広くなっています。
科目構成
| 項目 | 旧高度試験 | 高度情報技術試験 |
|---|---|---|
| 構成 | 午前I・午前II・午後(区分により午後II論述) | 科目A-1(共通的知識)・科目A-2(専門的知識)・科目B(専門的能力) |
| 専門の問われ方 | 記述・論述が中心 | 実務シナリオでの判断が中心(サンプル問題から見た傾向) |
正式な出題形式・配点はIPAの発表をご確認ください。サンプル問題の中身は「IPA公式サンプル問題 全10問の解説」で紹介しています。
出題テーマにAI・データが大幅に増加
科目A-1のシラバス案には、生成AI、RAG、AIエージェント、MCP、プロンプトインジェクション、ハルシネーション、AI倫理など、旧試験ではほとんど扱われなかったテーマが幅広く入っています。また、セキュリティが唯一の重点分野に指定されています。詳しくは「科目A-1(共通知識)シラバスVer.0.1の解説」をご覧ください。
データ・AI区分の新設
旧高度試験には、データ活用・AIに特化した区分はありませんでした。再編により高度情報技術データ・AI試験が新設され、基礎レベルにもデータマネジメント試験が加わります。
応用情報の段階がなくなる
これまでの「基本情報 → 応用情報 → 高度試験」という3段階から、「基本情報 → 高度情報技術試験」という形に変わります。応用情報レベルの知識は、科目A-1の土台として引き継がれていると考えられます。
他資格の免除要件
中小企業診断士の第1次試験「経営情報システム」の免除対象は、高度情報技術マネジメント試験・システム試験の合格者に変わります。旧試験の合格者は、経過措置で引き続き対象です。
再編前の合格者・受験者への影響
| 立場 | 影響 |
|---|---|
| 応用情報・旧高度試験の合格者 | 合格実績は有効。2029年6月30日まで、合格発表から2年以内なら共通的知識の免除対象 |
| 応用情報・旧高度試験の受験予定者 | 2026年の受験が最後のチャンス。合格後は新試験への移行を検討 |
| これから受験を始める人 | 最初から高度情報技術試験を目標に |
立場別の詳しいアクションは「再編の背景と立場別に今やるべきこと」で解説しています。
まとめ
| 引き継がれたもの | 変わったもの |
|---|---|
| 国家試験としての位置づけ | 区分が9つから3つに |
| 共通の土台+専門という構造 | 科目構成(科目A-1・A-2・B) |
| 旧区分の専門領域 | AI・データのテーマが大幅増 |
| 支援士との免除の連携 | データ・AI区分の新設、応用情報の段階の廃止 |
再編後の高度情報技術試験は、旧試験の良さを引き継ぎながら、DX・AI時代に合わせて中身をアップデートした試験といえます。旧試験で学んだ知識を活かしつつ、新しいテーマを補強していきましょう。当サイトの科目A-1 学習ロードマップと問題演習道場もぜひご活用ください。