IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験は、2027年に大きな転換点を迎えます。応用情報技術者試験と高度試験がひとつの新試験「高度情報技術試験」にまとめられ、基礎レベルにはデータマネジメント試験が新たに加わります。この記事では、再編がなぜ行われるのかという背景、決まっているスケジュール、そして受験者の立場ごとに「今のうちにやっておきたいこと」を順に整理します。
※本試験は当初「プロフェッショナルデジタルスキル試験」という仮称で呼ばれていましたが、2026年10月16日に正式名称が高度情報技術試験に決定しました。名称決定の経緯は高度情報技術試験の正式名称決定についてで詳しくまとめています。
なお、再編の背景に関する記述は、公開されているシラバス案や経済産業省の省令案の内容から当サイトが読み取った解釈です。試験日や申込期間などの最終的な情報は、必ずIPAの公式発表で確認してください。
この記事のポイント
- 応用情報技術者試験と高度試験8区分は、高度情報技術試験(マネジメント/データ・AI/システム)に再編される
- 基礎レベルにはデータマネジメント試験が新設され、ITパスポート・基本情報・情報セキュリティマネジメント・情報処理安全確保支援士は継続する
- 改正規則の施行は2027年4月1日予定、高度情報技術試験の開始は2027年夏〜秋の予定
- 旧試験の合格者には、2029年6月30日を期限とする免除の経過措置がある
- 何をすべきかは「今どの試験を目指しているか」で変わる
再編で何がどう変わるのか
まずは再編の全体像を確認しておきましょう。経済産業省がパブリック・コメントにかけた省令案(「情報処理の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」)によって、新しい試験体系が具体的に示されました。
| 現行の試験 | 再編後の扱い |
|---|---|
| 応用情報技術者試験 | 高度情報技術試験(マネジメント/データ・AI/システム)へ再編 |
| 高度試験8区分(ST・SA・PM・NW・DB・ES・SM・AU) | 高度情報技術試験(マネジメント/データ・AI/システム)へ再編 |
| (該当なし) | データマネジメント試験を新設 |
| ITパスポート試験、基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験 | 継続 |
| 情報処理安全確保支援士試験 | 継続 |
つまり、なくなるのは「応用情報」と「旧高度試験」の枠組みで、入門〜基礎レベルの試験とセキュリティの国家資格はそのまま残ります。旧試験と新試験の対応関係を一覧で確認したい方はIPA試験再編の新旧対応表も参考にしてください。高度情報技術試験そのものの概要は高度情報技術試験とはで解説しています。
IPA試験が再編される3つの背景
公開資料を読み解くと、今回の再編には大きく3つの狙いがあると考えられます。
1. DX・AI時代に合わせて「求めるスキル」を更新する
IPAが公開した高度情報技術試験の科目A(共通知識)シラバス案には、AIトランスフォーメーション、生成AI、RAG、AIエージェント、プロンプトインジェクション、AI倫理といったテーマが数多く並んでいます。従来の試験ではほとんど扱われなかった領域です。
ここから見えてくるのは、「技術を広く知っている人」を認定するだけでなく、デジタル技術やAIを使って業務や組織を変革できる人材を認定する試験へと、目的そのものが移りつつあるということです。科目Aの範囲は科目Aシラバスの解説で詳しく整理しています。
2. データを扱う人材を段階的に育てる
新試験には「データ・AI区分」が設けられたうえ、基礎レベルでは「データマネジメント試験」が新しく始まります。データの管理・設計・分析を担う人材を、基礎レベルから高度レベルまで一貫して認定できる仕組みが整えられた形です。データ・AI区分についてはデータ・AI区分の解説記事をご覧ください。
3. 細分化された区分を「役割」で整理し直す
旧高度試験は8つの専門区分に分かれていましたが、高度情報技術試験ではマネジメント/データ・AI/システムという役割ベースの3区分に集約されます。さらに、全区分に共通する「共通的知識」を土台として設けたことで、「共通の土台+区分ごとの専門性」という見通しのよい構造になりました。旧高度試験からどの区分へ進むのが自然かは旧高度試験の移行先まとめで整理しています。
再編までのスケジュール
現時点で公表されている主な動きを時系列に並べると、次のとおりです。
| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 2026年6月 | IPAが新試験のサンプル問題とシラバス案を公開 |
| 2026年8月 | マネジメント区分・システム区分の科目Bサンプル問題を追加公開 |
| 2026年9月 | 科目A-1(共通知識)シラバス案Ver.0.1を公開 |
| 2026年10月 | 省令案で正式名称「高度情報技術試験」などが示される |
| 2026年まで | 応用情報技術者試験・旧高度試験を現行制度で実施 |
| 2027年4月1日 | 改正後の規則が施行される予定 |
| 2027年夏〜秋 | 高度情報技術試験が開始される予定 |
| 2029年6月30日 | 応用情報・旧高度試験の合格者に関する免除の経過措置の期限 |
試験日や申込期間といった具体的な日程はまだ確定していません。最新の日程は高度情報技術試験はいつから?で随時更新していく予定ですが、最終的にはIPAの正式発表を確認するようにしてください。
立場別:今のうちにやっておきたいこと
再編への備え方は、いまどの試験を目指しているか、すでに何に合格しているかによって大きく変わります。代表的な6つのケースに分けて整理しました。
| あなたの立場 | おすすめの方針 |
|---|---|
| 2026年に応用情報・高度試験を受ける予定 | そのまま合格を目指し、合格後に科目Bの区分選びへ |
| 応用情報・高度試験に合格済み | 実績はそのまま有効。免除期限内の受験も検討 |
| これから初めて上位資格を目指す | 最初から高度情報技術試験を目標に設定 |
| 基本情報・ITパスポートを目指している | 予定どおり受験。データマネジメント試験も選択肢に |
| 情報処理安全確保支援士を目指している | 支援士の学習を続けつつ、相互免除を活用 |
| 企業の人事・教育担当者 | 資格手当・昇格要件の対象資格を新試験名で見直し |
ケース1:2026年に応用情報・高度試験を受ける予定だった方
- 受験の機会があるなら、予定どおり合格を目指すのがおすすめです。
- 合格実績は失効しません。さらに2029年6月30日までの経過措置として、合格発表から2年以内であれば高度情報技術試験の共通的知識が免除対象になります。
- 合格したら、科目Bでどの区分を受けるかを決めて、早めに準備を始めましょう。
免除の条件や手続きの考え方は高度情報技術試験の免除制度で詳しく解説しています。
ケース2:すでに応用情報・高度試験に合格している方
- これまでの合格実績はそのまま有効です。
- 合格が2025〜2026年ごろであれば、免除の期限内に高度情報技術試験を受験する戦略も考えられます。
- 科目Aでは生成AIやAIエージェントなどAI関連のテーマが増えているため、この部分を補強しておくと安心です。
ケース3:これから初めて上位資格を目指す方
- はじめから高度情報技術試験をゴールに据えましょう。
- まずは科目A(共通知識)の全体像をつかみ、重点分野とされるセキュリティから学習を始めるのが効率的です。
- 受験区分(マネジメント/データ・AI/システム)を決めたら、科目Bの対策へ進みます。
学習の進め方は高度情報技術試験の勉強方法、難しさの目安は高度情報技術試験の難易度を参考にしてください。
ケース4:基本情報・ITパスポートを目指している方
- 基本情報技術者試験とITパスポート試験は継続するため、予定どおり受験して問題ありません。
- データに興味があるなら、新設されるデータマネジメント試験も有力な選択肢になります。
- 合格後に次のステップとして目指すのが、高度情報技術試験という位置づけになります。
ケース5:情報処理安全確保支援士を目指している方
- 支援士試験は再編後も継続します。
- 支援士試験と高度情報技術試験の間では、合格または基準点到達から2年以内であれば、共通的知識が相互に免除されます。
- 支援士の学習内容は、高度情報技術試験の科目A対策にもそのまま役立ちます。
ケース6:企業の人事・教育担当者の方
- 資格手当や昇格要件の対象資格を、新しい試験名に合わせて見直す必要があります。
- 旧試験の合格者をどう扱うか(手当を継続するかなど)を社内で整理しておきましょう。
- 中小企業診断士など、他の資格の免除要件が変わる点にも注意が必要です。
再編後の試験対策はどこから始める?
高度情報技術試験は、全区分共通の「科目A(共通知識)」と、区分ごとの専門性を問う「科目B」の2本立てです。最初に科目Aで土台を固め、そのうえで区分の専門知識と実務的な判断力を磨いていく順番が、もっとも無駄の少ない進め方です。
- 科目A-1(共通知識)のシラバス案で出題範囲の全体像を把握する(シラバスVer.0.2の読み方ガイドも参考に)
- IPAが公開したサンプル問題で出題形式をつかむ(サンプル問題の解説)
- 受験区分を決め、マネジメント試験の対策やシステム試験の出題範囲を確認する
- 参考書選びは高度情報技術試験の参考書を参考にする
- 問題演習で理解度をチェックし、弱点を補強する
まとめ
- IPA試験の再編の背景には、DX・AI時代に求められるスキルの変化と、試験区分を役割ベースで整理し直す狙いがあると読み取れる
- 応用情報技術者試験と旧高度試験は高度情報技術試験に再編され、基礎レベルにはデータマネジメント試験が新設される
- 改正規則の施行は2027年4月1日予定、高度情報技術試験は2027年夏〜秋ごろ開始予定
- 応用情報・旧高度試験の合格者には、2029年6月30日までの免除の経過措置がある
- 自分の立場に合った準備を今から始めておくことが、新試験合格への近道になる
参考リンク
- e-Gov パブリック・コメント「情報処理の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」(PDF)
- IPA 試験制度の見直しについて
- IPA 新試験制度のサンプル問題
- IPA 科目A-1(共通知識)シラバス(案)Ver.0.1(PDF)
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