応用情報技術者試験と高度試験を再編して生まれる新しい国家試験の正式名称が、「高度情報技術試験」に決まりました。検討段階では「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」という仮の名前で案内されてきましたが、今後はこの正式名称で扱われることになります。
名称の根拠となったのは、経済産業省がパブリック・コメントに付した「情報処理の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」です。この省令案には、試験の名前だけでなく、科目の構成、科目免除のルール、旧試験合格者への経過措置、他の国家資格への影響まで、受験者に関わる内容がまとめて書かれています。
この記事では、省令案の内容を受験者の視点で読み解き、「名前が変わって何が変わり、何が変わらないのか」を順番に整理します。試験の全体像をまだ押さえていない方は、先に高度情報技術試験とはもあわせてご覧ください。
なお、ここで紹介する内容はあくまで省令の「案」にもとづくものです。最終的な内容は公布される省令で確定するため、受験にあたっては経済産業省・IPAの公式発表を必ず確認してください。
この記事の要点
- マネジメント・データ・AI・システムの3区分を総称して「高度情報技術試験」と呼ぶことが省令案に明記された
- 各区分の科目は「共通的知識」「専門的知識」「専門的能力」の3つで、共通的知識は3区分共通
- 改正後の施行規則は令和9年(2027年)4月1日施行の予定
- 共通的知識の科目は、他区分や情報処理安全確保支援士試験との間で、2年以内なら免除し合える仕組み
- 令和11年(2029年)6月30日までは、応用情報・旧高度試験の合格者も免除の対象に含める経過措置がある
- 試験の中身はこれまでのシラバス案・サンプル問題の方向性と一致しており、これまでの対策はそのまま活かせる
正式名称は3区分の総称としての「高度情報技術試験」
省令案の別表では、新しい試験が3つの試験区分として規定されています。それぞれの正式名称は次のとおりです。
| 区分 | 正式名称(省令案) |
|---|---|
| マネジメント | 高度情報技術マネジメント試験 |
| データ・AI | 高度情報技術データ・AI試験 |
| システム | 高度情報技術システム試験 |
そして、この3つの試験をまとめて「高度情報技術試験」と総称することが、省令案の中ではっきりと書かれています。つまり「高度情報技術試験」は単独の試験名ではなく、3区分を束ねる呼び名であり、実際に受験するのは「高度情報技術マネジメント試験」のような区分ごとの試験です。
これまで仮称や略称、通称などさまざまな呼び方で語られてきた新試験は、今後すべて「高度情報技術試験」という名前で扱われることになります。呼び名の変遷や、検索でよく使われる別名については高度情報技術試験の名称まとめで詳しく整理しています。
そもそも「省令案」とは何を決めるものか
情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」にもとづいて行われる国家試験です。法律そのものには大枠だけが書かれており、どんな試験区分があり、どんな科目を課すのかといった具体的な中身は、経済産業省令である「情報処理の促進に関する法律施行規則」で定められています。
今回の省令案は、この施行規則を改正して、新しい試験体系を法令上に正式に位置づけるためのものです。名称が「決まった」と言えるのは、試験の名前がこの法令レベルの文書に書き込まれたからです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正の対象 | 情報処理の促進に関する法律施行規則 |
| 施行日(予定) | 令和9年(2027年)4月1日 |
| 主な改正内容 | 試験区分の再編、科目、免除制度、手続きの見直しなど |
改正後の情報処理技術者試験はどう並ぶのか
省令案の別表に掲げられた、改正後の試験区分を一覧にすると次のようになります。
- 高度情報技術試験(高度情報技術マネジメント試験/高度情報技術データ・AI試験/高度情報技術システム試験)
- 基本情報技術者試験
- データマネジメント試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- ITパスポート試験
反対に、改正前の別表にあった次の試験は、改正後の別表には登場しません。
- 応用情報技術者試験
- ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験
- ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験
応用情報技術者試験と高度試験が高度情報技術試験へ再編されるという方針が、法令の文言としても裏付けられた形です。一方、情報処理安全確保支援士試験はこの別表とは別の制度として、引き続き実施されます。
旧試験からどの区分へ移るのかを一覧で確認したい方はIPA試験再編の新旧対応表、旧高度試験ごとの移行先は旧高度試験の移行先が参考になります。
3区分に共通する科目の組み立て
省令案では、高度情報技術試験の3区分のそれぞれに、同じ組み立ての3科目が置かれています。
| 科目 | 規定されている内容 |
|---|---|
| 第一号 | 情報処理システムに係る業務に関する共通的知識 |
| 第二号 | 区分ごとの専門的知識 |
| 第三号 | 区分ごとの専門的能力 |
このうち第一号の「共通的知識」は3区分で同じ内容です。IPAがシラバス案として公開してきた科目A-1(共通知識)が、この第一号に対応するものと考えられます。科目A-1の範囲は科目A-1シラバスの解説で整理しています。
区分ごとに問われる知識・技能
第二号・第三号で対象となる知識や技能は、区分ごとに次のように書き分けられています(省令案の記述を要約)。
| 試験区分 | 試験の対象となる知識及び技能 |
|---|---|
| マネジメント | 情報処理システムを用いる業務などの一体的な企画、情報処理システムの開発・提供に係る業務のプロセス管理 |
| データ・AI | 情報処理システムに活用するデータの管理・設計・分析と、それに係る情報処理システムの設計・活用 |
| システム | 情報処理システムの設計・開発・管理 |
この内容は、IPAがこれまで公開してきたマネジメント区分・システム区分のシラバス案と食い違うところがありません。名前が正式に決まっただけで、試験で問われる中身が大きく変わったわけではない、と受け止めてよいでしょう。区分ごとの詳しい範囲はシラバスVer.0.2の読み方、マネジメント試験の対策、システム試験の出題範囲、データ・AI試験の解説で確認できます。
受験者に直接関わる科目免除のルール
受験者にとって特に大きいのが免除制度です。省令案では、第一号の共通的知識の科目を中心に、免除の条件が整理されています。
高度情報技術試験で共通的知識が免除されるケース
次のいずれかに該当する人は、申請することで、高度情報技術試験の第一号科目(共通的知識)が免除されます。
| 対象となる人 | 条件 |
|---|---|
| 情報処理安全確保支援士試験の合格者 | 合格発表から2年以内に受験すること |
| 支援士試験で共通的知識の基準点に達した人 | 発表から2年以内に受験すること |
| 高度情報技術試験(いずれかの区分)の合格者 | 合格発表から2年以内に受験すること |
| 高度情報技術試験で共通的知識の基準点に達した人 | 発表から2年以内に受験すること |
具体例で考えると、高度情報技術マネジメント試験に合格した人が、その後2年以内に高度情報技術システム試験を受ける場合には、共通的知識の科目を受けずに済むということです。複数区分の取得を目指す人にとっては、受験計画を立てるうえで押さえておきたいポイントになります。
情報処理安全確保支援士試験側の免除
免除は一方通行ではありません。高度情報技術試験の合格者や、共通的知識で基準点に達した人は、2年以内に受験する情報処理安全確保支援士試験において、共通的知識にあたる科目が免除されます。
科目A-1のシラバスが支援士試験と共通化されていたこととも、筋の通った内容です。
災害などで期限内に受験できない場合
上記の免除はいずれも「2年以内」の受験が条件です。ただし省令案には、災害その他やむを得ない事由によって期間内に受験できなかった場合、経済産業大臣が定める期間内に受験すれば足りるとする規定が新たに盛り込まれています。
免除制度全体の考え方は高度情報技術試験の免除制度でもまとめています。
応用情報・旧高度試験の合格者への経過措置
応用情報技術者試験や旧高度試験にすでに合格している人、あるいはこれから受ける人にとって気になるのが経過措置です。
省令案の附則では、令和11年(2029年)6月30日までの間、免除の対象に次の試験の合格者も含めることが定められています。
- 旧規則の高度試験(ITストラテジスト試験、プロジェクトマネージャ試験など)
- 応用情報技術者試験
条文を読む限り、これらの試験の合格者は、合格発表から2年以内であれば次の免除を受けられる仕組みになっています。
| 受験する試験 | 免除される科目 |
|---|---|
| 高度情報技術試験 | 第一号科目(共通的知識) |
| 情報処理安全確保支援士試験 | 共通的知識にあたる科目 |
ここから読み取れるのは、2025〜2026年に応用情報技術者試験に合格した人は、高度情報技術試験を受ける際に共通的知識の科目が免除される可能性がある、という点です。ただし、これは条文の解釈にもとづく整理であり、実際にどのような条件で適用されるかはIPAの公式案内で必ず確認してください。
応用情報技術者試験がいつ終わり、どう影響するのかは応用情報の廃止はいつ?影響まとめ、両試験の違いは応用情報と高度情報技術試験の比較で解説しています。
ほかの国家資格にも及ぶ改正
今回の省令案は情報処理技術者試験だけで完結するものではなく、関連する他の資格の規則もあわせて改正しています。
中小企業診断士:第1次試験の科目免除
これまでは、ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者、応用情報技術者の各試験の合格者が、中小企業診断士第1次試験の「経営情報システム」の免除対象でした。
改正後は、高度情報技術マネジメント試験または高度情報技術システム試験の合格者が対象になります。データ・AI試験は対象として挙げられていない点に注意が必要です。また経過措置として、旧制度のもとで上記の試験に合格した人は、引き続き申請によって免除を受けられることも定められています。
弁理士:論文式筆記試験(選択科目)の免除
弁理士試験の論文式筆記試験(選択科目)の免除については、引用する条文番号の整理が中心です。情報処理技術者試験の合格者を対象とする枠組み自体は維持されています。
手続き面での細かな変更
受験者に関わる事務的な部分にも、いくつか見直しが入っています。
- 合格者の受験番号の公示方法が、官報から「インターネットの利用その他の適切な方法」に変わる
- 合格者台帳を電磁的記録で作成できることが明記される
- 合格証明書の交付手続きが整理される
まとめ:名前は変わっても、対策の方向性はそのまま
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 正式名称 | 高度情報技術試験(マネジメント/データ・AI/システムの3区分の総称) |
| 検討段階の仮称 | プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称) |
| 科目 | 共通的知識・専門的知識・専門的能力の3科目 |
| 施行日(予定) | 令和9年(2027年)4月1日 |
| 免除 | 支援士試験・他区分との間で共通的知識を相互に免除(2年以内) |
| 経過措置 | 2029年6月30日まで、応用情報・旧高度試験の合格者も免除の対象 |
今回の省令案で確定したのは、主に試験の「名前」と、それを支える法令上の枠組みです。試験の中身は、これまで公開されてきたシラバス案やサンプル問題の方向性と一致しています。名称変更にとまどう必要はなく、これまで進めてきた学習はそのまま活かせます。
これから準備を始める方は、IPA公式サンプル問題の解説で出題イメージをつかみ、高度情報技術試験の勉強法を参考に計画を立てるのがおすすめです。当サイトでも、今後は「高度情報技術試験」の名称で情報を整理していきます。
参考リンク
- e-Gov パブリック・コメント「情報処理の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」(PDF)
- IPA 試験制度の見直しについて
- IPA 科目A-1(共通知識)シラバス(案)Ver.0.1(PDF)
問題演習で実力を確認しよう
名称が決まった今こそ、実際に問題を解いて出題の傾向に慣れておきましょう。会員登録なしで、解説付きの問題にすぐ取り組めます。
高度情報技術試験 問題演習道場で今すぐ演習を始める